Point of noreturn の日記

日々の出来事や感じたこと書いてます。

沖縄からの電話

f:id:pointofnoreturn:20170705212800j:plain

iphoneの振動で目が覚めた。

私は基本常にマナーモードにしているので着信音を聞くことはほとんどない。

眠い目をこすりながら見てみると

登録されていない番号からの電話だった。

普通ならまず出ない。

でも時間は23時を回っている。

間違い電話ならいいが、時間が時間だけに出てみた。

それは懐かしい沖縄の人からの電話だった。

その人に通話口で自分の名前を呼ばれた瞬間、目が覚めた。と同時に

15年以上前のことが鮮明に思い起こされた。

 

ちょうど梅雨が明けたころだっただろうか、

空港に着くと知人というか前の会社の後輩が迎えに来てくれていた。

用があって沖縄へ行かなければならなかった。

その用とは、ある予算の消化の為に行かなければならない事業のようなことだった。

決して悪い気はしない。

沖縄旅行ができるのだから。

でも出るのは交通費と宿代だけ。

滞在は1週間。その間の食費等は自腹だ。

まいいか、そう思いながら沖縄へ向かった。

その直前に以前の会社の後輩に連絡をしていた。

迎えに来てくれとは言ってない。

ただ、行くから時間があったら会おうか、とだけ伝えてあった。

そうしたら彼は迎えに来てくれていた。

嬉しかった。

 

「元気そうで何より」

そういうと、懐かしい笑顔を見せてくれた

最後に会ってから何年か経っていた。

話したいことはたくさんあったが

でも、こうやって再開できたことでなんだか満足だった。

後輩も忙しい。仕事の合間を縫って迎えに来てくれた。

なのですぐに泊まるホテルに送ってもらい別れた。

「10日くらいは居るから時間が空いてるとき一杯やろう」

そういって別れた。

場所は糸満市だ。

海の近くのホテルだった。

たしか、西崎運動公園近くだったような気がするが定かではない。

本当はいろいろやらなければならないこともたくさんあった。

でも散歩の途中、あの碧い海を見た瞬間に気持ちは決まった。

思い切り遊んでやる!

半ば決心みたいなものだったような気がする。

こんなとこに来て仕事なんてやってられるか!

遊ばなかったら、ばちが当たる。

そう思えるほど沖縄は綺麗だった。

即効でコンビニに向かい、ガイドブックを買ってきた。

るるぶだったかな?

どこへ行こう?ずいぶん迷った。

いろいろありすぎて良くわからない。

考えてるうちに夜になったのでとりあえず飲みに行くことにした。

糸満は初めてではなかったが飲みに行くのは初めてだった。

だから店はわからない。とりあえずどこかに入ろうと思った。

一番最初に目についたバーに入った。

ショットバーのような店だった。

カウンターと小さなテーブルが二つある小さなバー。

 

その人は玉城さんといった。

一目惚れだった。

本当に美しい女性だった。

これぞ、まさに、ちゅらさん

そこの店のオーナー、経営者だ。

もちろん一人で店を切り盛りしている。

当時の私より5歳くらい上だっただろうか。

この辺は観光地ではないので本土の人間はほとんど来ない。

本土という言葉自体沖縄に行かなければ聞くことはない。

ちょっと話しただけで、

「本土の人でしょう」

と言われた。

まあ、当たり前だ。

話し方やイントネーションはまるで違う。

こっちも別に隠すつもりもない。

ジャックダニエルを頼んだ。

いつもこれを、水割りグラスにロックで頼む。

そして水は自分で入れるそれがいつもの自分の飲み方だ。

彼女の表情やしぐさ、話し方、何もかもが美しかった。

ただ、話をできるだけで幸せな気分になれる、そんな女性だった。

 

世の中は狭いもので、私の後輩もこの店に来ているとのこと。

話せば話すほど話は尽きなかった。

 

 

その晩は飲みすぎるくらいに呑んだ。

気が付けば閉店時間。

客はもう私一人しかいない。

まだなんか、なんでもいいから彼女と話がしたかったが

我慢して帰った。

でも結局その後、この店には毎日通っていた。

次の日の朝、後輩がホテルに来た。

嬉しいことに、これ使ってくださいと原付をおいて行ってくれた。

これで行動範囲が広がる。

さっそく、原付に乗って海へ向かった。

「いいところだよなー」

心底思った。

夜になるとまた昨日のショットバーへ行った。

他愛もない話をしながら酒を飲む。

それだけでよかった。

笑顔はまた一段と綺麗だ。

ただ、何も下心はなかった。

というか、まさに高嶺の花だった。

次の日、朝早くに目が覚めた。

コーヒーを飲みながらガイドブックを見始めた。

どうしよう?どこに行こうか?

そうだ、とりあえず最北端へ行ってみよう。

そう思った。辺戸岬だ。

そこで思いついたのは原付で沖縄一周してみようと考え付いた。

実は原付に乗ったのはこの沖縄へ来た時が初めてだった。

なので、当時の私にとっては結構な冒険だ。

さっそく出発。

準備なんてない。財布だけ持つとすぐ出かけた。

朝7時くらいだっただろうか。

市内の大通りを通るのは怖かった。

ちょうど通勤ラッシュの時間だ。

しかもこの原付、最高速度はどう頑張っても50キロしかでない。

通学の原付女子高生が邪魔そうに抜いていく。

抜かれるたびに

「すまない」

と心の中で言った。

このラッシュ時にとろとろ走られるのはいい迷惑だろうな。

そう思いながらおそるおそる原チャを走らせた。

市内を抜けて海が見えたときは感動だった。

心が洗われるとはまさにこのことか。

風がまた、最高に気持ちが良かった。

ハワイだ!まさにハワイだ。

ハワイには行ったことがないが。

ハワイもきっとこんな感じなんだろうと思った。

本当に美しい景色だった。

ちょうどこのころ、沖縄サミットが開催されたため。

東海岸側は整備されていると聞いていた。

途中、綺麗な場所があると止まって

その景色を楽しんだ。

f:id:pointofnoreturn:20170705051757j:plain

ちょっと先に、ものすごくきれいなビーチが見えた。

近くに行ってみようと思ったがそこは、ホテルのプライベートビーチだった。

策があって入れない。

基本は宿泊客しか入れない。

出入り口に、若い看守が立っていた。

男女が二人。20代前半。

ちょっとでいいからビーチを見たい、と伝えると

嫌な顔せずに

「黙っててくださいね」

と中へ入れてくれた。

美しいビーチだった。

58号ひた走っていた。

のんびりしすぎたせいか、

本部や今帰仁の方へ行く時間はないと判断しそのまま58号で突っ切った。

残念だった。

途中、時間を見計らって後輩に電話した。

原付で一周する話をしたら、あきれ果てていた。

でもいろいろとアドバイスをくれた。

迷ったら、人に聞くこと。沖縄の人は「あっちー」と指をさして教えてくれます。

とのことだ。

何度も寄り道したせいで着いたのは14時くらいになっていた。

それに、想像以上に疲れていた。

今からまた帰るのか、そう思うとちょっと元気がなくなる。

帰りは西回りで帰った。

こっち側はびっくりするぐらい何もなかった。

途中、「ヤンバルクイナ 飛び出し注意」と書かれた標識があったりする。

これには、驚いた。

そして坂が結構多い。

でも西側はこれぞ、冒険!という感じだった。

心細くなるくらい、人や車とすれ違うことはなかった。

当時のガラケー、地図やナビなどない。

迷ったらどうしよう?と思える程、何もない。

糸満に着いたのはもう夕方だった。

糸満より南はまた明日にしようと思い

いつもの店へ向かった。

その日は後輩も来ていた。

かなりの常連客と知り合いになった。

その日のことを話したら、みんなかなりあきれていた。

でも、この原付の旅は本当に楽しかった。

またやりたいと今でも思っている。

それに原付はすごく便利だ。

首里城公園の守礼の門などは、本当に目の前まで原付で行ける。

f:id:pointofnoreturn:20170705213111j:plain

食べ物もずいぶんいろいろ食べたが

一番印象に残っているのは

やはりゴーヤだ。

バーで、玉城さんが作って来て食べさせてくれたことがあった。

煮物みたいな感じだった。

「これが一番苦く食べる調理法なの」

と言ってた。

食べた瞬間、一瞬、ぎゅっっと身が縮んだ気がした。

それぐらい苦かった。

ちょっと経験がない、衝撃的な苦さだった。

私が食べているのを見て、みんな笑っていた。

苦さが体や表情から溢れていたらしい。

 

それと、ヤギ汁。

これは強烈だった。

バーで知り合った人が美味しいと評判の店へ連れて行ってくれた。

店に入った瞬間、ちょっと後悔した。

食べるのが大変だった。飲み込むのに苦労した。

体が拒否しているのが解る。

味は我慢できるのだが、こめかみや喉元、目の奥の血管が脈打っているのが解る。

体が受け付けないという経験はこれが初めてだった気がする。

 

あっという間に時間が過ぎて行った。

毎日本当に楽しかった。

朝起きると暗くなるまであちこちと行き回った。

そして夜はいつもの店で、なじみになった人たちと飲む。

ちょっと不安になるくらい毎日が楽しい。

ふと、社会復帰できなくなるのでは?と思ったくらいだ。

そして、最終日前日が来た。

その日は知り合いになった人たちが食事をご馳走してくれるとのことで

夕方からみんなで夕食を食べに行った。

酒も入ってかなり遅くまで。

気が付けば、いつも行っていた玉城さんの店が閉店の時間だ。

私はみんなにお礼を言って急いで店へ向かった。

明かりが消えていた。

無念、最後にもう一目、もう一度会いたかった。

そう思ったら、彼女が店のカギを閉めて出てくるところだった。

私は今までのお礼だけでも言いたいと思いそばへ駆け寄った。

挨拶しようとしたら、彼女はなぜか機嫌が悪かった。

「今日はもう来ないと思ってました。」

なんか冷たい。

雰囲気も悪い。

どうしようと思ってたら、玉城さんはとんでもないことを言い出した。

「今から、私の家へ来ませんか?」

と。

えー!!

明らかに、ちょっとうろたえてしまった。

彼女は独身で一人で住んでいるのは知っていた。

全く想像もしていなかった展開。

さらに、どうしようと考え込んだ。

おろおろしてたらタクシーが来た。

行きましょう、と言われ結局タクシーに乗ってしまった。

でも、家に着いた時にはいつもの優しい玉城さんに戻っていた。

なんか、独身女性の家へ入るのは罪悪感のようなものがあったが

やさしい彼女を見たら、まあいいかと思った。

そして、言われるままに、彼女の家へお邪魔した。

二人で飲んだ。

だいぶ飲んだ。

毎日会っていたが話すことは全く尽きなかった。

玉城さんは聡明な人だった。

個展を開いたり、本を執筆したりもしていた。

そして博識だった。特に地域経済には精通しているようだった。

本当にいろんなことを教えてくれた。

あっという間に時間がたった。

もう朝になろうとしている。

話が途切れた時に

「そろそろ帰ります」

と言ったらその瞬間に空気が変わった気がした。

しばし無言。おそらく1分もなかったと思うが永遠の時間に感じるほど長かった。

そして玉城さんは

「そう」

と一言だけ言った。

ただ、別人のように冷たい感じがした。

なんかもう眼を見ることができなかった。

とにかく滞在中のお礼を言わなければ、そう思い

私は感謝の気持ちを伝えた。

なんてお礼を言ったのか覚えていない。

玉城さんがなんて言い返したのかも覚えていない。

私は平常心ではなかったし、何よりもどうしていいかわからなかった。

とにかく帰ろうと玄関先に向かった。

靴を履いているときに

「元気でね、また連絡くださいよ」

そういわれたのだけを覚えている。

私は頭を下げ家を後にした。

なにか、思い切り後ろ髪をひかれるような気がした。

 

結局その後私は玉城さんに連絡することはなかった。

沖縄にもそれ以来行ってない。

そして、15年以上の月日が経っていた。

 

今、電話の向こうに玉城さんがいた。

懐かしい。ただ懐かしい。

名前を呼ばれたときは本当にうれしかった。

独特の発音、特徴のある話し方。何もかもが好きだった。

あの時のことを次から次へと思いだした。

そう、私は玉城さんのことが好きで好きで

会いたくて会いたくて毎日店へ通っていたっけ。

彼女はいつも優しく笑顔で迎えてくれてた。

あの時の自分は何を考えて玉城さんに会っていたんだろう?

今となっては思い出すすべもない。

ああ、素直じゃなかった。

自分の気持ちは怖くて全く伝えることはなかった。

いや、そんなんじゃなかったのかもしれない。

まあ、もうどうでもいい。

ただ懐かしかった。

「元気ですか?」

と言われ

「おかげさまで」

と答えた。

いろいろ話したかったが言葉が出てこない。

玉城さんは変わりなくやっているという。

ただ、どうして電話してきたのかを聞いてみた。

私はこの15年で2度ほど番号を変えていた。

一度は無くし、もう一度は捨てた。笑

だから、番号を知っているわけはなかった。

理由は、埼玉の私の知人が沖縄の私の後輩と今、店に来ているという。

それで、私の話が出て電話番号を聞いてかけたとのことだった。

なるほどと思った。

先日、知人が沖縄旅行へ行くから何かお勧めを教えてくれと言ってきた。

私は、

「俺に聞くな、ガイドブック買え」

と言ったのを思い出した。

その時、沖縄にいる後輩の連絡先を教え、後輩にも一応連絡を入れといた。

で、二人で玉城さんの店へ飲みに行ったらしい。

いい気なものだ。

最後に玉城さんに聞こうかどうかさんざん迷ったことがあった。

結婚はされましたか?と。でももう私には関係ないことだった。

だから

「また、沖縄へ行きますよ。会いに行きます。」

と言って電話を切った。

ベッドに入って寝ようとした。

すると、胸のなかで止まった時計のような何かが

動き出そうとする気がした。

私は手を添えてそれを止めた。

 

思い出は思い出のままでいい。

時間が立ちすぎていた。

 

梅雨明けが待ち遠しい。

夏のすがすがしい風が待ち遠しい。

 

f:id:pointofnoreturn:20170705213908j:plain