Point of noreturn の日記

日々の出来事や感じたこと書いてます。

グラン=プラス

お題「もう一度行きたい場所は?」

くたくたに疲れていた記憶だけがある。

今からおよそ20年以上も前のこと。

私はハンガリー人の知人とベルギーのザベンテム空港に着いたところだった。

帰国前日にブリュッセルで一泊の旅程だった。

なぜ、ブリュッセルで一泊しなければならなかったのか?

何処からの帰国だったのかは、今は覚えていない。

ただ、異常な程の疲労感があった記憶がある。

宿までは、一緒にいた知人の友人が迎えに来てくれると言う。

なんでもその友人はハンガリーの駐ベルギー大使館の職員だという。

へ〜、すごい人が迎えに来てくれるんだな、と思いながら駐車場で待っていた。

程なくその友人とやらがあらわれた。

はっきりとは覚えてないが、乗って来た車は

ベンツのS600だった気がする。

まさか、こんな車に乗る機会があるとは、

と思って迎えに来た知人の友人を見てさらに驚いた。

一瞬、映画のワンシーンを見ている気がした。

真っ黒のスーツに黒のサングラス。

180センチはあろうか?

何より驚きは、ブルースウイルに似ている!

そして、無精髭。

「絶対うそだ!大使館職員なんて絶対にうそだ!」

と見た瞬間に心の中で叫んだ。

私が唖然としている前でハンガリー人の知人は

そのブルースウイル似の大使館職員と再会を懐かしがっていた。

本当に嬉しそうだった。

どう考えてもマフィアか何かのようないでたち。

私はちょっと怖くてまともに挨拶も出来なかった。

が、ランチをご馳走すると言って来た。

断りたいけど断れるはずもない。

仕方なく着いて行った。

どんなレストランで何を食べたかは覚えてないが

ビールを飲んだ記憶がある。

驚いたのはそのブルースウイルも飲んでいた事だ。

「お前!またこれから運転するし、それから仕事だろ?しかも大使館職員なんだろ!?」

と心の中で叫んだ。

でもこっちで昼に一杯くらいは大したことではないらしかった。

まあ、飲んでしまえばどうでもいい。

しかし、このたった一杯が効いた。

自分で言うのもなんだが、私は酒が強かった。

ウィスキーなら一晩でボトル二本は頑張れば開けられるくらいだ。

でも、相当疲れていたのか、たった一杯のビールでグデングデンに近いくらい酔ってしまった。

そのまま宿に送ってもらい、彼に

別れを告げた。

丁寧にお礼を言って、最後に

「髭はそれよ」

と言いたかったが結局言えなかった。

酔いが相当酷かったが、なんとかチェックインを済ませて部屋へ向かいたどり着いた。

ドアを開け中に入り鍵を閉めたら

そのままベッドに倒れ込んだ。

そのまま爆睡。

どれくらい寝たのだろうか。

ノックの音で目が覚めた。

ドアを開けると知人がいた。

彼はお洒落だ。

紫色のスーツにグリーンのシャツを来ていた。

こんな格好、日本人がやったらホストだ。

私は首のあたりがよれよれになったトレーナーと

いつも履いているチノパン。

「夕食を食べに行こう」

彼が言った。

私は眠い目をこすりながら頷いた。

 

ちょっと小高い場所から、ブリュッセル市内を眺めていた。

夕暮れ時の町並みは、なんか幻想的でもあった。

ベルギーは初めてだった。

旅行で来ていたわけではないので、特にわくわくもしない。

狭い路地を抜けて街へ降りて行った。

その時、視界がぱっと開けた。

その瞬間、目を疑うような光景が目の前に広がっていた。

素晴らしかった。

ただただ、素晴らしくそして美しいと思った。

その時は、ここがどこかは解らなかった。

後で解ったのだが、

そこは、グラン=プラスで世界遺産にも登録されている

世界で最も美しいといわれている広場だった。

いつもこんな感じだ。

旅行ではないので何もその国のことは調べないで来ていた。

今思えば、本当にもったいないことだった。

業務命令とはいえせっかく海外行くならそれなりに調べるべきだった。

でもあのころは、そんなゆとりもなかったか。

ガイドブックなるものを買ったのは初めて海外に行った時だけだった。

地球の歩き方。だった気がする。

それ以降はただ言われるがままに歩き回っていただけだ。

その頃、22、3、だっただろうか。

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疲労もあってか、もうずっとここにいてもいいと思った。

一緒にいた友人は何度か来ているらしかった。

ちょっとすると

「食事をする店を探そう」

と言い出した。

そんな気になれない。

私は友人に

「悪いが、今日は時間が許す限りここにいたい」

と言って食事を断った。

友人は笑顔で

「OK」

というと、どこかへ向かって行った。

私は、すぐそばにあるカフェに腰を下ろした。

ビールではなかった。コーヒーの気分だ。

酔いで、この景色をぼやけさせるのはもったいなかった。

コーヒーを飲みながら、広場をゆっくり眺めた。

飽きることはない。

どんどん、暗くなっていく。

ぽつぽつと電燈が灯されていく。

夜景もまた素晴らしかった。

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そして、一杯だけビールを飲んだ。

旨かった。

昨日までの喧騒をちょっと忘れた。

ほろ酔いも手伝ってか、気分も良かった。

そろそろ帰らないと、と思いながら

重い腰を上げた。

来た道を、宿に向かって歩き出した。

ここを、背にして歩くのはもったいない気がした。

何度も振り返りながら歩いた。

宿に向かう途中、ものすごく腹が減っていることに気が付いた。

見渡せば、住宅街だ。

しまったな、と思いながらも少し店を探してみた。

すると、目の前に中華料理店が現れた、そんな気がした。

もちろん、在ったのだが。現れたような気がした。

というのは、真っ白な店だったからだ。

およそ、中華料理店とは思えない佇まいだった。

中も白で統一されていた。

なんか、スイーツでも売っているような店だ。

ここで、ちょっと不思議な体験をした。

中に入ると、気の良さそうな店主らしき人が迎えてくれた。

席に着くと、定番の青島(チンタオ)ビールを注文した。

海外の中華料理店には結構おいてある店がおおい。

もちろん、普通においしい。

メニューを見たが、何が書いてあるのかよくわからない。

英語はほとんどできない。

いつも知人が通訳してくれている。

でも、今は一人だ。

こういう時は、たいがいゼスチャーで何とかなる。

麺類でも頼もうかと思っていると店主が来て、

「今日はもう店は閉めたから、好きなもの食べていいよ」

と言ってきた。

連れられていくと、料理が並べられていた。

ここはビュフェスタイルのようだった。

迷っていると、店主が

「これも美味しい。これも美味しい」

とたくさんの料理を取ってくれた。

促されるままに食べ始めると

たしかに美味しい!

酒もうまい!

幸せな気分だった。

いつの間にか、店主の子がそばに来て同じテーブルに座っていた。

眼鏡をかけた小学生3,4年せいだろうか。

なぜか、この子が異常に私になついた。

気が付いた時には私の膝の上で、一緒に本を読んだりしていたほどだった。

店主との話も弾んだ。

他愛もない話だが、中国へ行った時などの話をして盛り上がった。

気分がよかった。

が不安もあった。かなり飲んで食べた。

いったい、いくらになるんだ?

まあ、気にしても仕方ない。

私は大いに楽しんだ。

昨日までの嫌なことなど全く忘れていた。

でも、さすがに帰らなければならない。

私は、お礼を言って支払いをお願いした。

その時だった。信じられない言葉が店主の口から出た。

「今日は私のおごりです。また、明日から頑張ってね」と。

え!?

私はそんな訳にはいかないと、お金を払わせてくれと頼んだが

聞き入れてくれるわけもなかった。

そして、

「またどこかほかの国へ行ったら中華料理食べてね」

といった。

すごくうれしかったが、なんか複雑な気持ち。

それだけではなく、何か包みをお土産だといって持たせてくれた。

中にはハムが入っていた。

もう、なんて言って良いのかわからなかった。

人の温かさに触れた気がした。

どこの国の出身、何人なんて関係ないのかな。

きっと、楽しい気持ちや幸せな気持ちはみんな同じなのかもしれない。

そう思った瞬間だった。

私は、店主に深くお礼を言って、店主とちびっ子に別れを告げ

店を後にした。

実はこういったことは初めてではなかった。

私は海外に行って、呑み屋や食堂のようなところで

初めて会った人に、おごってもらうことが良くあった。

よほど貧乏に見えるのか?それとも物欲しそうにしてるのかな?

などと思うことがあった。

明日フライト、あさってには日本か。

日本に帰ることを考えると心が安らぐ。

やっと、帰れる。

そんなことを考えながら宿へ向かって歩いた。

 

それから、数年後幸運にももう一度ブリュッセルに行く機会があった。

その時は自分より10以上も年下の女性何人かと一緒だった。

当然のごとく、グランプラスに行ってみた。

ただ、残念なことにあの中華料理店にはたどり着くことができなかった。

時間が立ちすぎていた。

そして、一緒に来た女性たちがグランプラスを初めて見たときの反応は?

特に何も感じていないようだった。笑

それを見た私は

「お前ら!ここを見て何とも思わないのか?この美しさを見て心が動かないのか?」

なーんて下衆なことは言うわけはない。

人がどう思おうかなんて関係ない。

自分の価値観を人に押し付けるなんて悲しいことだ。

そう思って生きてきていた。

だから、私が初めて見たときから虜になったこの場所の美しさを

何とも感じない人がいても全然不思議もない。

むしろその逆だ。

だからこそ、人は面白い!

心底そう思った。

ガールズトークに花が咲いていた。

それを聞くことは無しに、私はコーヒーを飲みながら

またこの場所を見ることができた幸せをゆっくり感じていた。

やっぱり、機会があれば

もう一度行きたい場所だ。